災害後のアルコール関連問題への支援については、本質的には平時と変わららないものと思われます。まずは傾聴と信頼関係づくりに努め、生活支援も含めた継続的で柔軟な対応を行っていく必要があります。
・災害後の特徴として被災者は生命の危機が生じるような経験、家族などとの死別、失業や住宅を失うことなどでもたらされる悲嘆や喪失感、転居を繰り返すことによる生活のしづらさ、コミュニティでの人間関係などからくるストレスを抱えており、災害を経験したことによる影響を十分に理解した上で支援していくことが求められました。
・また、被災地では既存の支援機関に加え、新たに加わった様々な支援機関が活動しているため、支援者間で情報や支援の方向性などを共有して進めることが重要でした。
みやぎ心のケアセンターの場合はこうでした
1)背景の理解
・当センターに依頼のあった対象者の背景には、「健康上の問題」、「精神変調」、「家族家庭問題」、「住環境の変化」、「経済生活再建問題」、「失業就労問題」「将来への不安」「人間関係」「近親者の喪失」等の震災による影響を含めた様々な問題がありました。
(参照:みやぎ心のケアセンター活動実績:「アルコール支援対象者の初回支援時の背景」)
・震災前は一軒家などで近隣とは適度な距離を保ちつつ、コミュニティとつながりを持って過ごしていた生活が一変し、プレハブ仮設住宅や災害公営住宅などへの転居に伴い、密集した環境で新たなコミュニティ形成が求められることになります。住民同士の関係構築が円滑に進まないことが少なくありませんでした。
・被災地では、生活状況や健康状態の確認のため様々な支援者が訪問しますが、アルコール関連問題に対する過度な関わりが加わると、被災者が負担を感じて心を閉ざしてしまうことがありました。
2)支援の際の姿勢
・アルコール関連問題を抱える方の中には、前述の状況から孤立している方も少なくありませんでした。そこで、実際の支援では、アルコールに関する問題を直接取り扱うのではなく、日頃の生活の様子や趣味、興味があることなどの話を中心に聞き、支援者とのつながりを作ることで孤立した状態に変化が生まれるよう訪問を継続することがありました。
・悲嘆や喪失感などの心理的な背景がある中で訪問を拒否されることもありましたが、本人の話を丁寧に聴き、根気強くかかわることで、様々な辛さや不安を言葉にするようになった方がいました。本人のペースを大事にしながら傾聴に努め、信頼関係を築いていくことが重要でした。
・被災者の中には失業などで生活上の問題も抱えていた方もいたため、福祉サービスの調整、居場所の提供、経時問題への対応、就労支援など、生活の視点からの支援も行っていくことが必要でした。受け入れやすいところから支援を行い、アルコール関連問題については、きっかけや本人の受け入れるタイミングを待って断酒や節酒につなげました。なお、本人の身体状況から、緊急的に受診支援が必要な場合がありました。
3)被災者支援団体を含めた関係者との連携の強化
・アルコール関連問題は、健康面だけでなく、問題となる行動が近隣住民にも影響を及ぼすことがあり、特に被災地では関わる支援者が多岐にわたりました。既存の保健・医療・福祉関係者に加え当センターや生活支援員などの被災者支援機関の職員、行政の復興担当職員、時には警察などが関わっていました。支援の方向性を統一するためには、関係者間で情報を共有し、役割分担を明確にして連携することが重要でした。
・支援が長期に渡ることで支援者の疲弊が生じやすくなるため、チームで関わること、支援者同士支え合うことが必要でした。
4)地域の支援体制づくりへの協力
・被災地では、支援者の所属や職種、アルコール関連問題に関する知識や経験が多岐にわたっていました。そのため、当センターは人材育成を目的に、要請に応じて勉強会や検討会などを丁寧に実施しました。これにより、回復過程の理解やスキルアップが図られ、支援方針の共有化がスムーズになりました。研修要望は生活支援員を統括している社会福祉協議会や介護サービス機関などから寄せられ、専門医療機関職員を講師に研修を行いました。また、事例検討会も専門医療機関職員の協力を得ながら適宜実施し支援者への支援に努めました。
・中長期的な視点で地域の中核となる人材を育成するため、被災沿岸地域の医療機関、市町村、保健所職員を対象とした専門医療機関における実地研修等を実施し、支援者のスキル向上に努めました。
・アルコール関連問題のある方への対応だけでなく、仮設住宅入居者や一般住民の理解を深めるための普及啓発も行いました。
以上の内容を包含して、実際の支援で大事にしてきたこととして、支援のポイントをまとめましたので支援の際の参考にしてください。
